ファクタリングの審査を通過するためのポイントや対策を解説
2025年5月13日
最近、中小企業界隈で「ファクタリング」という言葉を耳にする機会が増えてきました。多くの方がポジティブな評価をしていますが、中には「審査が通らなかった」という声も少なくありません。
この記事では、資金調達を希望する企業や個人事業主の方に向けて、ファクタリングの審査を通過するためのポイントや対策を詳しく解説します。
まずは、ファクタリングの基本についておさらいしましょう。
その後、審査の基準や通過しやすくなるためのコツを紹介します。
この記事を参考に、資金調達をスムーズに実現していただければ幸いです。
ファクタリングとは?
「彼を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉は、古代中国の兵法書『孫子』の有名な一節です。ビジネスの世界でも同じことが言えます。
まずは、ファクタリングとは何かを正しく理解することが、審査通過への第一歩です。すでにご存じの方も多いかもしれませんが、基礎を押さえることで対策も立てやすくなります。
1.ファクタリングの定義
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権を専門の業者に譲渡し、現金化する資金調達方法です。通常、売掛金の入金までに数カ月かかる場合がありますが、ファクタリングを利用することで、素早く資金を手にすることが可能になります。
2.ファクタリングは負債ではない
手形割引と異なり、ファクタリングは未決済の債権を処分して資金調達する方法ですので、財務諸表上の負債ではありません。また融資でもありません。つまりファクタリングによる資金調達では負債を抱えるリスクを避けることができます。
3.ファクタリングの種類
ファクタリングには、業者とのみ取引する2社間ファクタリングと、債務者を含めた3社間ファクタリングがあり、それぞれにメリット、デメリットがあります。
2社間ファクタリングは業者とのみ取引するので、債務者を含む外部に知られることなく資金調達ができる反面、手数料が高いというデメリットがあります。
2社間ファクタリングでは取引先から受け取った売掛金を依頼企業がファクタリング業者に支払います。業者にとっては、債務者を交えた3社間ファクタリングと比べ、回収不能のリスクが高くなりますので、手数料が高くなるのは仕方のないところでしょう。
一方で、3社間ファクタリングは、売掛先(債務者)に対してファクタリングの実施を通知し、譲渡の同意を得る必要があります。しかし、この通知がきっかけで、取引先に不信感を抱かれ、今後の取引関係に悪影響を与えるリスクも否めません。
そのため、3社間ファクタリングを利用する場合は、ファクタリングへの理解が深く、長年の信頼関係がある取引先を選ぶことが重要です。
また、ファクタリングは迅速な資金調達が可能な点が魅力ですが、3社間ファクタリングの場合、そのスピードは2社間ファクタリングよりも大幅に遅れるというデメリットがあります。これは、売掛債権の譲渡について取引先から承諾を得るプロセスが必要だからです。
一般的に、3社間ファクタリングの入金完了までには、最短でも約1週間、場合によっては2週間程度かかるケースもあります。これに対し、2社間ファクタリングは即日入金が可能なため、スピード面で大きな差があります。
そのため、急な資金調達には不向きですが、資金繰りに余裕がある場合には有効な手段と言えるでしょう。
一方で3社間ファクタリングのメリットは手数料の安さです。
決定後、債務者は売掛債権の支払いをファクタリング会社に対して行います。ファクタリング業者は、入金額より手数料を引いた金額を、売掛債権を持っていた企業(債権者)に支払いますので、業者のリスクはゼロに近く、それが手数料の安さにつながっているのです。
4.ファクタリング業者
ファクタリングを行う業者には銀行系、ノンバンク系、独立系など様々あります。
それぞれの違いを見ていきましょう。
独立系ファクタリング会社
一般的に審査のハードルが低く、最短即日で入金が可能など、迅速な資金調達ができるのが特徴です。
また少額取引に対応していることが多いため、小口取引を行う企業や個人事業主に適しています。ただし、手数料が高めに設定されていることが多い、というデメリットもあります。
銀行系ファクタリング会社
相手が銀行系なので、信頼度が高く、安心して利用できる一方、取り扱い可能な金額が高額に限られる会社も多く、審査が非常に厳しくなります。
必要書類も、独立系ですと請求書・通帳だけでよい会社があるのに比べ、銀行系ファクタリング業者の必要書類は、決算書、税務申告書の写し、登記簿、診療報酬等請求書の写し、支払決定通知書の写しなど多岐にわたります。また、審査完了までに2~3週間ほどかかるデメリットがあります。
ノンバンク系ファクタリング会社
クレジットカード会社やリース会社、カードローン会社、消費者金融など預金業務を行わない金融機関が運営する系列会社になります。
独立系ファクタリング会社よりも手数料がやや低め設定されており、コストを抑えて利用できるのが特徴です。一方、申し込みから入金までに1週間ほどかかるデメリットもあります。
5. 損失補填の不要
ファクタリングでは、業者が売掛債権の回収に失敗しても、利用企業が損失を補填する必要はありません。これはファクタリングの大きな魅力の一つです。
一方で、「手形割引」の場合、現金化した後でも業者が回収に失敗した場合、利用企業が損失を補填する義務が生じます。ファクタリングと手形割引の大きな違いとして理解しておきましょう。
6. 取引手数料
ファクタリングを利用する際は、取扱業者に手数料を支払う必要があります。手数料の金額は業者や取引方法によって大きく異なります。
手数料が安いのは3社間ファクタリングです。業者によって差はあるものの、最低0.5%から9%程度で利用できる場合が多く、大幅な割引をしなくても資金調達が可能です。これは、売掛先(債務者)からの承諾を得る分、リスクが軽減されるためです。
一方、2社間ファクタリングの手数料は10%から20%が相場です。こちらは売掛先の同意を得ずに契約が成立するため、業者側のリスクが高く、その分手数料も割高になります。資金調達のスピードが速い代わりに、コストも高くなる点が特徴です。
どちらを選ぶかは、資金繰りの緊急度や手数料負担のバランスを考慮して判断する必要があります。メリット・デメリットを十分に理解した上で、最適な方法を選びましょう。
7. 悪徳業者の存在
ファクタリング業界には、悪徳業者も存在します。以下のような特徴が見られる場合は、注意が必要です。
・手数料が20%を大幅に超える
・契約書の提示や説明がない
・契約後に融資の勧誘をしてくる(ファクタリングは融資ではありません)
・携帯電話しか連絡先がない
・公式のホームページが存在しない
これらのケースに該当する場合、悪徳業者である可能性が高いため、慎重な対応が求められます。信頼できる業者を選ぶことが、安心した資金調達に繋がります。
何が審査される?
ではファクタリングでは何が審査されるのでしょうか?
① 売掛先の信用度
公的機関や上場企業が売掛先の場合、「支払能力=信用力が高い」という理由から審査に通りやすい傾向があります。
② 売掛金の支払期日
売掛金の支払期日が短いほど審査に通りやすく、長いほど審査落ちしやすい傾向があります。それは、支払期日が遠い場合、期日までの間に不測の事態が発生し、売掛先の経営状況が悪化し、回収不能に陥る可能性もが高くなるからです。なお、3社間ファクタリングの審査では支払期日は関係ありません。
③ 売掛先との取引実績
「利用者と売掛先との取引実績」も、審査されます。長年にわたって取引している会社ですと、安定して売掛金を回収できていると判断され、審査に通りやすくなりますが、逆に初めての取引先ですと、架空取引の可能性を疑われ、審査落ちしやすくなります。
④ 3社間ファクタリングで同意を得られているか?
3社間ファクタリングの方が比較的審査が緩い傾向にありますが、審査に出した時点で債務者側の同意を得られていることは必須です。
⑤ 債権者の信用力
審査対象は主に売掛先となりますが、利用者=債権者についてまったく切確認しないわけではありません。利用者の信用力があまりにも低い場合は、審査落ちすることもあります。それは会社の規模や財務状況ではなく、詐欺を働くのではないか、とか、契約を守るのか、という信用力となります。
ファクタリング審査に通るコツ
これまでファクタリングの審査方法について解説してきました。
ここで、審査に通るための具体的なポイントを整理してお伝えします。
以下のコツを押さえて、スムーズな資金調達を目指しましょう。
① 経営が安定している企業の売掛金を選ぶ
売却する売掛債権は、経営が安定している企業のものを優先しましょう。特に、銀行系のファクタリング業者を利用する場合、この点で審査落ちするケースが多いため、注意が必要です。
② 支払期日の短い債権を選ぶ
支払期日が短い売掛債権ほど審査に通りやすくなります。
期日が長くなるほどリスクが高まり、業者側も慎重になります。選べる場合は、早期に現金化できる債権から優先して売却するのがポイントです。
③ 取引実績のある会社の債権を優先する
ファクタリングする売掛債権は、取引実績のある企業のものを選びましょう。
取引履歴がない場合、業者側は信用リスクを判断しにくいため、審査が厳しくなることがあります。
④ 3社間ファクタリングの場合は事前同意を得る
3社間ファクタリングを行う際は、必ず債務者(売掛先)から事前に同意を得てください。
事前に何も伝えずに業者から連絡が行くと、取引先との信頼関係に悪影響を及ぼす恐れがあります。
もし、言い出しにくい場合や同意が得られない場合は、手数料は高くなるものの、2社間ファクタリングを選ぶのも一つの手です。2社間ファクタリングであれば、売掛先にファクタリングの事実が知られることはありません。
⑤ 社会的信用を維持する
ファクタリングの審査において、申込企業の信用力は直接影響しないものの、以下のような場合は審査落ちするリスクがあります。
・企業が実在しない
・税金の滞納がある
・業者との連絡が取れない
・通帳や契約書類の偽造
・架空の売掛債権を提出
こうしたリスクを回避し、社会的信用を維持することが、ファクタリング審査を通過するための最低条件です。
今回は、ファクタリングの審査に通るための重要なポイントについて解説しました。
信頼できる債権を選び、誠実な取引を心がけることで、ファクタリングは強力な資金調達手段になります。
ぜひ、この記事を参考にして、円滑な資金繰りを実現してください。
最後までご拝読いただき、ありがとうございました!